<086> 小学校受験では絵を描かせる「受験絵画」が一部の小学校であるのをご存じですか?

エスポワールにはペーパーの授業はありません。その代わりに、ペーパー以外で必要不可欠な『躾』『絵画』『制作』『行動観察』『人前力』『運動』『音楽』『言語』に力を入れています。

初めて受験される方には「受験=勉強」と信じ込んでいますので、勉強以外の必要不可欠なものを理解することは難しいと思いますが、第1子で受験を経験され受験の本質をご存じの方には、きっと目から鱗のお教室だと思います。

さて、今回はその中から“受験絵画”をご紹介します。

慶應義塾幼稚舎や慶應義塾横浜初等部、早稲田実業学校初等部などは、かなりの頻度で“絵”の課題が出ます。多くがテーマを与えて描かせる「課題画」です。将来の夢や夏休みに行った場所、短いお話を聞いて気になった場面を描かせるなど、実に様々です。

小学校受験で絵を描かせる理由は二つです。一つ目は描いているときに「何を描いているのですか?」の返答を聞いて精神年齢を測ることです。二つ目は脳の発達年齢です。幼児期において同年齢の子供よりも絵が上手な子は下手な子供より脳の発育が速いと信じられているからです。

大人の絵と違い、幼児の月齢と絵の完成度には関係があります。月齢と言うよりは脳の発育と関係があると言った方が相応しいです。

大ざっぱに分類すると、最年少さんは脳の発育が未熟な為、心電図や地震計のようにジグザグになぐり描きをします。

年少さんは脳の信号が上手く指先に伝わらないので絵をなぞることもままなりません。塗り絵もはみ出します。顔を描かせても人魂ような輪郭に点が2つの目と横一直線の口だけを描きます。

年中さんでは男女の性別で違いも出ますが、男児は案山子(かかし)のような絵を描きます。腕は左右に水平に伸びきっています。手は巨大でギザギザ指です。首や耳はなく顔は丸で髪は縦にザクザクと描きます。女児は最初に顔の輪郭として丸ではなくU字を描き、目に星を入れ、そして髪を入れますが、何故かリボンも付いてきます。腕は男児と違って下です。また、先が3つのとんがりチューリップもお約束ごとのように描き加えられます。

一般に年長さんではダイナミックな素晴らしい絵を描くグループと繊細で見たままの素晴らしい絵を描くグループと年少・年中さんレベルから全く変わらないグループに分かれます。これはエスポワールの生徒ではなく世間一般にです。

特に年中さんは皆が同じような絵を描きます。男児の案山子(かかし)のような絵と女児のU字顔は誰に教わったのだろうと不思議に思います。これは人間が進化の過程をなぞって成長するように、最初から脳にインプットされているかのようです。

幼児は目の前の親や友達、絵本の絵、テレビの映像で人間の顔形を認識しています。親や友達には案山子のような人はいませんし、絵本にも案山子のような人物は出てきません。テレビもしかりです。恐らく、正しい情報が目から脳に入ってきても、脳が発育途上の為に勝手にイメージ作りしてしまうのが原因かなと思っています。女児が描く共通の髪型もイメージなのかなと思います。目のキラキラ星はお友達の絵の影響が大と思いますが、既に私が子供の頃から何故か女児だけに流行っているので不思議と言うよりか謎です。

脳の発育過程と絵の完成度にはある一定の関係があります。脳が一定の発育レベルを迎えるとそれなりの絵の完成度となります。逆に、それなりの絵の完成度の子供はそれなりに脳が発育しているとも言えます。

小学校はそれなりに脳が発育している子供を欲しがります。その為に絵画の課題を取り入れる学校があるのです。

一般論では正しいことです。精神年齢の幼い子に高度な絵は描けません。しかし、エスポワールの現場で子供たちを指導していると、脳の発育が十分と見受けられ、また精神年齢の高い子供には絵が上手な子もいれば幼稚な絵を描く子もいます。それは脳の全機能が同時に均等に発育するのではないからだと思います。よって絵だけが苦手な子供は存在します。

脳の発育が原因なら幼児に絵を教えても無駄だと思われる方もいることでしょう。確かにエスポワールの指導を受けても最年少さんに3歳年上の年長さんのような絵を描かせることはできません。これは脳の発育が壁となります。しかし、脳を刺激すれば1学年上の絵を描けるようにさせるのは無理なことではありません。

顔を正確に描ける子供は少ないです。まず最初にA4サイズいっぱいに正確な顔の輪郭を描きます。縦長の楕円形ですね。目は楕円形(顔)のド真ん中に位置しています。真ん中よりも上に描く子供は多いです。そして、忠実に白目と黒目をちゃんと描きます。眉毛もまつ毛もあります。鼻も下に広がっていて穴もあります。上唇も下唇も描きます。耳もしっかり描きます。イメージや空想や絵本の顔ではなく、これが本物の顔の絵です。

本物の顔を描くには、机の上に鏡を置いて見たままの自分の顔を描かせる練習をさせるべきですね。見たままなので目の中に星を入れる子はいませんし、変な髪型を描く子もいません。練習を重ねるうちに顔のバランスも各パーツも忠実に描くことができます。まだ鏡の手助けは必要ですが、絵を見ただけでは小学校低学年並みのレベルです。

個人差や限界はありますが、脳の発育を待たずとも、絵は“練習”により一定レベルに上達します。放っておくと脳の発育を待つことになり、入試に間に合いません。

※過去記事の再掲載です

エスポワール らくらくさん