<141> 愚息に日本最難関小のコネが回ってきたよ

20年くらい前になりますが、エスポワールの入室考査での出来事です。

年長の女の子だったのですが、お教室の後ろで突っ立っているだけで、椅子にも座らずに一切の参加を拒否しました。

「どうしたの?」と尋ねると・・・

「パパに言われたから来ただけで、何もやりたくない!」

と言い放ちました。

人見知りとか、恥ずかしがり屋さんとか、精神年齢が幼くて参加を拒否したのではないのです。

精神年齢も高く、自分の意見をしっかりと持っていて「嫌です」と突っぱねるのです。

当然に「入会不可」の通知を出しました。

ところが、そのお嬢さんは翌月の入室考査にも来ました。

そして、同じことを言うのです。

「パパに言われたから来ただけで、何もやりたくない!」

と言って、教室の後ろに立ったまま見学していました。

後日に通知を出すのも面倒なので、お迎えのお父様に直接「入会不可」を告げました。

そして、遠い千葉県某所から何度も足を運ぶ理由を聞きました。

お父様は・・・

「実は、娘は(日本最難関の某小学校)に入ることがほぼ決まっているのですが、先生もご覧のように、皆と同じ行動を取らずに拒否するのです」

お父様はご自身の母校の小学校へ入れるために、娘が生まれたときからOB組織のお偉いさんとのコネクション作りに励み、また、毎年たくさんの寄付金を積み重ねて、ほぼほぼ合格を手中にしていたそうです。

しかし、本番の入試でも同じ態度なら、どんなに強力なコネがあっても不合格は確実です。

当時は、エスポワールが日本で唯一の行動観察の専門教室だったので、他に頼るところもなく、助けてもらいたい一心で再び入室考査を受けたようです。

いくらエスポワールでも、参加したくないと宣言するお嬢さんにエネルギーを注ぐほど暇ではないし、一人に構うと他のお子さんにも迷惑が掛かりますので、お父様のお気持ちは分かりますが・・・と丁重にお断りしました。

これで終わったかと思ったのですが、その翌月の入室考査にもお嬢さんはやってきました。

ところが、今までとは違って、教室に入った瞬間に少し微笑んでいるのです。

お父様曰く・・・

「エスポワールを2回見学して、今度は参加したいようなことを言っていたので、性懲りもなくまた来ました」

と仰っていましたが、特大のニンジンをぶら下げて来たのでしょう。

元々、小学4年生のような大人びた顔つきで、精神年齢も高く、頭の回転も速いお嬢さんでしたので、あっという間にクラスのリーダー格となり、全クラスの中での首席卒業となりました。

暫くして、合格のお礼に親子3人がやってきました。

「絶望のどん底にいましたが、先生のお蔭で合格することができました」

「先生は諦めていた学校に入れてくださった大恩人ですので・・・」

菓子折と謝礼と書いてあるずっしりと重い封筒を渡されました。

「いや、いや、いや、こちらはお気持ちだけで結構です」とお返ししました。

「分かりました。それでは、今年のメルマガに先生のご子息のご誕生とありましたので、ご子息の入学に際してはお手伝いをさせてください」とのことでした。

もちろん、丁重にお断りしました。

しかし、これで終わりとはなりませんでした。

律儀なお父様は忘れてはいなかったようで、愚息が年中さんになったときに、再びコネ入学のお話を持ってきてくれました。

エスポワールの他の先生は・・・

「日本最難関の学校に入学したら、エスポワールにも箔が付くし、お教室は永遠に安泰になる」

「悪い話ではないと思います」

と、この話に乗るように勧められました。

エスポワールの繁栄は確実ですよね。

さて、らくらくさんはこの美味しい話に乗って、エスポワールを盤石なものにしたのでしょうか。

答えは・・・

意地でもその学校は受験せず、学芸大の附属小に入学して、現在は早大生です。

当然のことですが、多くのご家族の夢と希望を託されていながら、我が子だけはこっそりと最難関校へ入学だなんて、そのようなことはできるわけないです。天の神様はちゃんと見ています。

教え子たちと同じように正々堂々と戦わせたのでした。

エスポワール らくらくさん