<009> これから小学校受験の勉強を始めるご両親へ贈る言葉|入試問題は学力テストではなく、知能の発達検査です

スイスにピアジェさんという心理学者がいました。彼は知能の発達を4つの段階に分けました。それは・・・
@感覚運動期(0~2歳頃まで)
@前操作期(2~7歳頃まで)
@具体的操作期(7~12歳頃まで)
@形式的操作期(12歳~)

皆さんのお子さんは上から2番目の「前操作期」(2~7歳頃まで)に当たります。この時期の特長は、自分で見ている世界が中心となります。言い換えれば「自己中心的」に考えるのです。見たまんまの直線的な思考です。思考が未熟なために、見えないところを想像したり、相手の立場になって考えたり、頭の中で答えを一旦保存して、それを踏まえて解き進めることが苦手なのです。

具体的には・・・
・同じ数のおはじきを並べても、片方の並び方を変えるだけ、そちらの数が多く思えたり、少なく思えたりします。
・直径の違うビーカーに同量の水を入れても同じ量だとは気付きません。
・観覧車も頭の中で回転させることが苦手です。
・A>BでB>Cと言われても、想像力がないので頭の中で大中小を組み立てることが出来ません。
・積み重ねた積み木の見えない部分を考えるのも苦手です。
・目の前にあるぬいぐるみの後ろ姿を想像するのも苦手です。
・相手の主張を理解して、それを踏まえた上でお話しすることも苦手です。

次に、上から3番目の「具体的操作期」(7~12歳頃まで)ですが、上記の「前操作期」で苦手だったものが解決されるのです。ちなみに、ピアジェの理論はこんなに簡単にまとめることは出来ないのですが、皆さんに解り易く書きました。

要は何が言いたいかというと、「ひとりでとっくん365日」を解いても、出来ない問題は出来ないと言うことです。

なぜなら、小学校受験問題は学力テストではなく、知能の発達検査だからです。学問だと思ったら大間違いです。試験問題の中心は「具体的操作期」(7~12歳頃まで)を対象に作られているからです。

それぞれのお子さんの脳は、それぞれに発達しているので、現時点での得意分野(発達している分野ですね)や苦手な分野(未発達の分野ですね)があるのは当然です。Aの問題を簡単に解けるお子さんと、間違えたけれど、ちょっと教えただけで理解できるお子さん、10分後に理解できるお子さん、3日後に理解できるお子さん、1週間後に理解できるお子さん、1ヶ月後・・・3ヶ月後・・・半年後に理解できるお子さんもいるのです。Aの問題が楽勝だったお子さんでも、Bの問題ではチンプンカンプンの場合も多々あるのです。

問題の種類によっては、即答できるお子さんもいれば、1ヶ月後や半年後に理解できるお子さんもいます。脳の発達段階は、個々によって違い、また、その個々の中でも、それぞれのジャンルによって発達は違うのです。即答~半年先まで、理解の幅は違ってくるのです。私が何度も何度も「幼児教室なんかには行くな!」と言っているのは、このためです。エスポワールにペーパー対策講座を作らないのも、このためです。開講すれば生徒さんが大勢集まることは判っていても、開講するつもりはさらさらありません。授業について行けるのは、脳が満遍なく発達している上位2割までで、残りの8割は月謝を運んでくるだけのお客様になるからです。半分のお子さんが理解できるまでに授業のレベルを下げれば、合格実績を稼ぐ上位2割のお子さんが「易しすぎる」と去ってしまうでしょう。全員を救おうとすると、大多数が去っていきます。お教室の評判を維持する(合格実績を高くする)には上位2割のお子さんを相手に授業を組み立てるしかないのです。

小学校受験問題の大部分は知能検査です。知能検査の対策は・・・

*理解できない問題は、理解させようとはせずに、親が解説しながら解くのを眺めさせるだけで良い
*同じ問題集は3巡すること

理解が出来ない問題でも、親が解くプロセスを聞いたり、眺めたりしているうちに、お子さんの脳のシナプスはその問題が解けるようになるように次々と結合するでしょう。直ぐには脳の体制が整わなくても、同じ問題を3巡することによって、その問題が解ける脳になります。同じ問題は3巡しましょう。全く同じ問題だと脳の発達は早くなります。違う問題集に浮気すると、類似問題でも、脳に応用力がないので全くの別問題に見えてしまうのです。その前に、同じ問題集を繰り返すことによって、脳のシナプスを完成させる必要があります。違う問題集は、脳を作り上げてからです。

学問ではなくて、知能検査なので、教えても理解が出来ない問題もあることを知った上で学習を始めてください。むやみに教えるよりも、刺激さえ与えておけば、時間が解決してくれるのです。

※過去記事の再掲載です

エスポワール らくらくさん